2019年度 全日本吹奏楽コンクール 課題曲Ⅲ 打楽器パート徹底解説
行進曲「春」
解説:西久保 友広 Tomohiro Nishikubo
読売日本交響楽団 打楽器奏者
冒頭のスネアドラムはリズムのニュアンスが管楽器と合うように、まずそのためには正確にそのリズムを刻めているかどうか誰かに16分音符を演奏してもらいながらチェックをしましょう。コンクールに向けてみなさんは相当な期間練習をすると思いますが、合奏を重ねていくにつれて、こういった付点8分音符の音型が曖昧になってしまうケースが多いので注意したいですね!
2小節目のシンバルとトライアングルは4小節目一杯まで伸ばします。シンバルはバンド全体の編成にもよりますが18インチのもので華やかに演奏したいですね!そのためにはこのトライアングルがとても重要で、シンバルの響きに煌びやかさを添えるイメージで、木管楽器がトリルをするような感覚で演奏しましょう。
3小節目のティンパニとバスドラムはパイプオルガンのようなサウンドを。装飾が付いているとそちらばかりに気が捉われてしまうのでまずは本音符のみ→装飾1つ→装飾2つと練習してみましょう。バスドラムは装飾音符のときに極端にヘッドの端で演奏するケースが多く見られますがこの場合は装飾音符に存在感が出るようにヘッドのどの箇所で演奏するのが効果的に聴こえるか研究してみましょう。ティンパニ、バスドラム共に装飾の2つ目がうまく本音符に向かうように演奏できるといいですね。
11小節目にフォルティッシモがありますが決して打楽器セクションは力まないように。ティンパニとバスドラムは「深みのあるサウンド」を、スネアドラム、シンバル、サスペンデッドシンバルは「華やかさ」を目指して演奏しましょう。
13小節目の合わせシンバルは頑張り過ぎず、サスペンデッドシンバルとうまくブレンドするように。サスペンデッドシンバルは「A」(練習番号 以下省略)に向けてマレットや手を使ってdim.を作りましょう。cresc.のカーブが急にならないほうが曲の雰囲気に合うと思います。
「A」の1小節前のバスドラムソロはとてもセンスが問われます。シンプルが故に難しい!バスドラムが持つ低音の響きを十分に発揮できるように演奏したいです。そのためにはバスドラムビーターにスピードをかけ過ぎず、ヘッドの裏面をうまく振動させるイメージで。ミュートをする場合はヘッドの端のほうでしましょう。よくヘッドの中心部あたりでミュートしているケースが見かけますが、その場合バスドラムが持つ低音がカットされてしまい心地よいサウンドが客席まで届きません。
44小節目からグロッケンが出てきます。管楽器に彩りを添えるイメージで、ニュアンスが揃うといいですね!管楽器の楽譜にアーティキュレーションが書いてあるので書き写しましょう。特に「C」はフレーズの頭をはっきり目に、そして最後を押し切らないと爽やかに演奏できると思います。
67小節目のシンバルは8分休符をうまく活かしましょう。音の切れ目がザク切りした感じにならず、ヤスリをかけたようになめらかにいくと金管低音群とうまくアンサンブルできます。
「G」のTrioからは雰囲気を大切にしつつ音楽の推進力がなくらないようにしましょう。スネアドラムの16分音符は左右が均等にさらりと。89小節以降のテンポ感が不安定にならないように気をつけましょう。
「I」のアウフタクトのスネアドラムのロールは利き手ではないほうの手のcresc.が疎かにならないよううまく盛り上げてバンド全体を次の場面に運んであげましょう。「I」からのスネアドラムとグロッケンのリズムは冒頭と同様に。121小節目からの4小節間は長いフレーズで捉えてみましょう。
「J」のトライアングルはmpですが唯一ロールではない箇所です。存在感が欲しいですね。爽やかに澄んだ音で演奏できるように、トライアングルビーターは細過ぎず凛と演奏したいですね。
132小節目のスネアドラムのアウフタクトの16分音符からのロールはロールに焦る必要はないので16分音符を丁寧に演奏しましょう。サスペンデッドシンバル、ティンパニ、バスドラムのロールは「K」に向かって一体感を持って豊かに盛り上がりましょう。
140小節目のサスペンデッドシンバルはセンスが問われますね!141小節から雰囲気がガラリと変わり、全体的にたっぷりと豊かに朗々と歌う場面ですので、cresc.は早めにかけて他の場面よりロールはゆったり目にしつつも1音1音しっかり空気を送り込む形でロールをしてみましょう。ここのサスペンデッドシンバルがうまく次の場面に運べると他の楽器のみなさんは格段に演奏しやすくなると思います(←とプレッシャーをかけてみる)。
「L」からスネアドラムとバスドラムはフォルティッシモを持っていますが若干リラックスをして161小節目に温存しておきましょう。
「M」の2拍目のシンバルは管楽器の細かいパッセージが聴こえるように、叩いたら早めにdim.をかけてみましょう。
最後の装飾音符はスネアドラムの「LLR」で演奏するニュアンスにティンパニとバスドラムが寄せられるといいですね。3人ひとりひとりがしっかりと、というよりは3人でひとつのフレーズを奏でられる意識で。さらりとこういうものが上手に演奏できるといいですね♪