2019年度 全日本吹奏楽コンクール
課題曲Ⅰ「あんたがたどこさ」の主題による幻想曲
フルートパート<徹底解説>
解説:礒田 純子 Junko Isoda
(オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ フルート・ピッコロ奏者)
日本の童謡・わらべ唄として、皆さんもよくご存知でしょう…「あんたがたどこさ」。女の子の手まり唄(毬つき)として古くから歌われている曲で、九州出身の私も幼少の頃、毬ではなく、ボールをつきながらこれをよく歌っていました。とても懐かしいです。
今時の子供達はそんな遊びはしていないのでしょうか……(苦笑)
童謡としての正式な曲名は「肥後手まり唄」と言うそうです。熊本県熊本市船場地区を舞台とした歌詞とされていますが、諸説もあるようですね。童謡あるある、と言ったところでしょうか(笑)
元々の童謡楽譜は2/4拍子で、途中3/4拍子が2小節入ってくる変拍子の形式です。
そんな原曲のことも知った上で、この曲を演奏していきましょう!
さて、冒頭いきなりFl Soloから始まりますね。しっとりした雰囲気を感じながら幻想的に、そして魅力的に演奏したいところですね。途中でブレスせず、ひと息で演奏して欲しいですが、rit.もあり、どうしても息が続かない…という人は、2小節目に入る前にブレスして下さい。元々歌詞のある曲ですので、文章の区切りがおかしくなるブレスの取り方は、不自然に聴こえますからね……。
練習番号「A」の2小節前からの1st FlのG(ソ)-A(ラ)トリルについてですが、倍音の運指で演奏する方法もあります。ですが、音質がザラザラしてしまうので、音色があまりクリアではありません。
そこで、3本の指を動かさなければなりませんが、図①の替え指をお勧めします。練習番号「B」の4小節目も同じです。この曲の中にはG(ソ)-A(ラ)全音の箇所と、練習番号「H」の4小節目にG(ソ)-As(ラ♭)半音のトリルが出てくるので、区別しなければなりません。一般的な運指表に載っている運指だと、G(ソ)-A(ラ)・G(ソ)-As(ラ♭)どちらも同じ音でトリルしているように聴こえてしまうものがありますので、気を付けておきましょう。(この替え指はPiccには応用しないで下さいね…楽器の機能上、音が出ません)
練習番号「B」の1小節目、16分音符の前に8分休符があるため、揃いにくいと思われます。早く出てしまったり、或いは後ろに寄せ過ぎたりしてしまうことがあり、リズムが合わず…になりやすいです。Claも一緒に吹いているフレーズですので、パート・木管セクション練習等でよく意識しておいて下さい。同じフレーズが練習番号「K」の3小節前にもありますね。注意しておきましょう。
練習番号「D」の2小節前は機敏にくっきりとアクセントをつけて吹ききって下さい。それに対して次のメロディを柔らかくしなやかに、滑らかに出てきましょう。大きな音量で飛び込んでしまわないように!アーティキュレーションは細かいのですが、フレーズは大きく長く感じ取りましょう。
練習番号「D」の7小節目のPiccですが、かけ上がるような印象で、そしてG(ソ)の伸ばしの音は、楽譜には付記がありませんが、作曲者からの要望で、音を突っ張って伸ばすのではなく、G(ソ)の音の最初は息でのアクセントのようにして当てた後、少しdim.傾向で演奏して欲しいとレコーディング時に話されていましたので、そのように演奏してみてはいかがでしょうか。
練習番号「G」からのTutiiで演奏する8分音符のアクセントは固くハッキリと、Piccがしっかりサウンド全体の輪郭を作って下さい。そして、97小節目の終わりは最後2つのsffzでタンギングの発音を固くスパッと音を止めましょう。その後は一瞬時が止まったように、微動だにしないでおきましょう。
練習番号「H」の1小節前のdecrescendoで音程が下がらないように気を付けて。練習番号「H」の2小節目の3連符は真ん中が休符になっているので、パート内でリズムが崩れやすいです。Obが1拍前に3連符を吹いていますので、それを聴きながら入ってる感覚も必要ですし、練習の際は前後の音を使って休符に音を入れて吹き、休符の長さ感覚を掴んで下さい。
練習番号「I 」からのPiccはGlock.と同じフレーズです。ピッチ・歌い方も揃えて二人でよく一緒に練習しておきましょう。このフレーズのPiccはメロディに対して音域が高いので、音量が大きくなりがちですが、主役ではありませんので、全面的に前に出てしまうのではなく、少し控えめではあるけれど、キラキラ感は失わずに歌って演奏して下さい。決してぶっきらぼうな歌い方にはならないで下さいね。
練習方法としては、高音域な為、音が当たりにくい等を感じずに吹けるように、この16分音符のところを一旦オクターブ下げて、楽に吹く練習をしておきます。その時にそのフレーズを歌う息の流れや方向性を考えます。その後、楽譜通り音域を戻しても、同じような感覚で吹けているかということを観察してみて下さい。
そして、このフレーズ最後の練習番号「J」の3小節前にあるF(ファ)-G(ソ)トリルですが、Flと同じ運指では半音のトリルに聴こえてしまうので、図②か③の替え指をお勧めします。
練習番号「K」の1小節前は練習番号「B」の3小節目の時とは違い、音型は上がっていますが、decrescendoになっていますので、音型につられ、音量が大きくなっていかないよう心がけましょう。
曲の終わりから5小節前にcresc.があり、クライマックスを迎える雰囲気で盛り上げて、Euph.の一瞬のsoloに繋げ、最後はTutiiで格好よくリズムを固く吹き、曲を締め括って下さい。
運指図解