2020年度 全日本吹奏楽コンクール課題曲 打楽器パート徹底解説
【課題曲Ⅴ】吹奏楽のための「幻想曲」-アルノルト・シェーンベルク讃 作曲 尾方 凛斗
解説 渡辺 壮
〇冒頭
Vib.のarcoはバランスが大事。音が出るまで時間がかかるので少し早めにスタート。自分が思ってるよりも少し大きくcresc.するくらいで丁度良いかも。
〇2小節
マラカスは頭を下に向けて円を描くように。ダイナミクス(dim.)を音量で表現するのは難しいので、円を描く面積を大→小にし、かつスピードをゆっくりにする。楽器を置くときにノイズを出さない配慮が必要。(画像参照)
〇3小節
B.D.とL.Gongは音色をブレンドさせてサウンドを作る。音量が大きすぎると金管楽器の特殊奏法が聴こえなくなるので注意。
〇4小節
グロッケン、木管とのユニゾンを意識する。
〇6小節
フェルマータは完全に音が無いので、三拍目の頭に入ったら音を消す。
〇7小節
Vib.はFl.の影のような音を作りたい。輪郭はハッキリしなくてはいけないが、硬い音色は良くない。マレットの選択に注意。
〇12小節
ティンパニの装飾音符はソロとして考え、しっかりと前に出す。
この小節は各打楽器のアーティキュレーションが複雑に絡み合っているので、各奏者が楽譜に忠実に演奏すること。
〇15小節
B.D.の二拍目に16分休符があるが、止める必要はない。三拍目の音を自信を持った音でタイミング良くしっかりと出す。
〇16小節
Ratchetは滑らかに回したい。dim.は回すスピードを遅くしていくことによって表現する。
〇21小節
B.D.のロール、出だしはアタックが付かないように注意。
S.Cym.の装飾音符をたたく場所、少しだけ楽器の中心の方を使って硬くなりすぎない程度に粒が聞こえるように。
〇22小節
Glock.は正しいリズムでcresc.が分かるように。
〇25小節
B.D.のロールは4拍目に入ると同時に音を消すことで丁度良く楽譜通りの長さに聴こえる。
〇27小節〜36小節
S.D.は重厚なサウンドで装飾音符がハッキリと聞こえるチューニングと楽器、響線を選択する。アクセントは強く打つのではなく、ストロークのスピードが速くする。軽くスティックを振る感じが良い。装飾音符2つと、アクセントのついた四分音符が、いつでも同じキャラクターで演奏できる技術を習得したい。B.D.は曲の終わりまでマレットを交換する時間がないので、やや重めで、ややハッキリめの音が出るマレットを選択する。28小節目の形はアタックも聴き取れ、響きを失わない程度に軽めのミュートをすると良い。
〇36小節〜
S.D.、B.D.、S.Cym.でガッチリとアンサンブルを作る。
〇39小節
Glocken.は木管のユニゾンを意識する。
〇51小節〜59小節
ダイナミクスがmfに落ち、アクセントが消える(スネアは二,四拍のみ)。音色は変えずにやや弱めのmfという解釈で良いと思う。特にスネアドラムの二,四拍のロールが強くならないように気を付けたい。
〇59小節〜
ダイナミクスがfに上がり、Timp.も加わる為に打楽器全体の音量が上がるのだが、大太鼓とS.Cym.にはアクセントがないので、少し控えめに演奏し、アクセントがついたf以降で音量を上げると良い。同様に67小節〜のffも頑張り過ぎず、71小節〜のfffを想定したバランス作りをするべきでしょう。しかしfffが大きすぎるとバンド全体の音量バランスを崩してしまうので注意が必要。
〇71小節〜最後
各楽器のリズムや音がクッキリと聴こえるようにしたい。パワーではなくスピードを意識して音を出すと良い。78小節〜のTimp.、S.Cym.、B.D.はロールの入りをしっかりと落とし、cresc.を効かせたい。
最後の小節にあるS.D.とB.D.の装飾音符を振り払うようなイメージで演奏する。B.D.は三拍目のWhipが入るタイミングでしっかりとミュートし、音を残さないこと。
各楽器が楽譜に書いてあることを守りながら、その裏にある狙いを感じ取り演奏する事により、より多くの共感を得られると思います。